この記事のポイント
- 薬物乱用防止教室と授業は役割が違う。授業でやるのは「断る力の中身」
- 入口は「なんで一回だけでもダメなの?」。回数ではなく仕組みの話に着地させる
- 板書は3列。一回目に何が起きるか・やめられなくなる仕組み・誘われる場面
🎤講演のあとの50分が、一番やりにくい
薬物乱用防止教室は、年に一度は必ず実施される。外部講師が来て、映像を見て、話を聞く。
そのあとの保健の授業が、実はいちばんやりにくい。
生徒はもう話を聞いている。「危ない」も「ダメ絶対」も知っている。
そこに同じ話を重ねても、既に聞いた内容の確認になってしまう。
僕は最初の年、まさにそれをやった。
講演で使われた資料をなぞって、危険性をもう一度説明して終わった。
生徒の反応は静かだったけど、あれは納得の静けさじゃなくて、知ってる話を聞いている静けさだったと思う。
だから授業では、講演では扱いきれない部分を引き受ける。
なぜ一回でやめられなくなるのかという仕組みと、実際に誘われる場面でどうするかという行動。この2つだ。
50分をこう配る
- 導入 5分 ── 発問1つ。全体に投げて、手元に書かせる
- 展開① 15分 ── 一回目に体の中で何が起きるかを押さえる
- 展開② 20分 ── 「なぜやめられなくなるのか」を班で考える
- まとめ 10分 ── 自分の言葉で1文書かせて回収する
学習指導要領(保健体育編・保健分野)では、薬物乱用について心身に様々な影響を与え、健康を損なう原因となること、そして防止には個人の心理状態や人間関係、社会環境が影響することが位置づけられている。
つまり、物質の危険性だけを教える単元ではないと読める。展開②に時間を割く根拠がここにある。
導入で使える発問3つ
そのまま言える形で書く。どれか1つでいい。
- 「なんで、一回だけでもダメなんだろう」
一番使いやすい。「ダメ絶対」は知っている前提で、その理由に踏み込ませる。
答えが依存の仕組みに着地するので、展開①にそのままつながる。 - 「危ないって全員知ってるのに、なくならないのはなんでだろう」
社会環境の話に入りたいときに。
知識と現実のズレを扱えるので、展開②が深くなる。 - 「もし、よく知ってる人から誘われたらどうする?」
行動を問う発問。知らない人からではなく、知っている人から、というのが実態に近い。
ただし重くなりやすいので、扱い方には配慮が必要になる。
板書は3列で組む
黒板を縦に3つに割る。
- 左:一回目に何が起きるか ── 脳への作用
- 中央:やめられなくなる仕組み ── 依存
- 右:誘われる場面 ── 知っている人から/断りにくい状況
左から右へ、物質の話から人の話へ動いていく。
右列が今日のゴールになる。「知らない人から誘われる」という思い込みを、ここで崩しておく。実際に起きるのは、断りにくい相手からの誘いのほうだ。
生徒の反応が固まったときの2手目
この単元は、講演のあとだと教室が構えていることがある。「正解を言わないと怒られる」という空気だ。
そういうときは、正解を求めない発問に切り替える方法もある。「なくならない理由、思いつくだけ挙げてみよう」。正誤のない問いにすると、班が動き出す。
逆に、茶化す反応が出ることもある。その場合は流さず、一度止めて短く枠を示す。「今日は、誰かを笑う時間じゃないよ」。長く説教しないのがコツだと思ってる。
言葉が出てこない班には、役割を決める方法もある。
これは別に書いた → 【保健授業のコツ】「発表して」を「教えて」に変えるだけ
同じ「分かってるのに言えない」が起きるのが、喫煙の単元だ。
あっちは物質の話に戻すと動く。
→ 喫煙と健康の指導案|中学2年保健の導入発問と50分の流れ
評価は「仕組みで説明できているか」で見る
まとめの1文を回収して、危険性ではなく仕組みが書けているかを見る。
- 「薬物は危ないから絶対にやらない」→ 講演と同じ。まだ授業が届いていない
- 「一回で脳が変わってしまうから、その先が自分で選べなくなる」→ 展開①が入っている
- 「知ってる人から誘われるほうが断りにくいと分かった」→ 右列まで届いている
3つ目が出たら、次の時間に読み上げる方法もある。
<やるとしたら、この順番>
■準備するもの:なし。教科書と黒板だけでいい
■時間:導入5分・展開15分+20分・まとめ10分
■最初のひと言:「なんで、一回だけでもダメなんだろう」
■うまくいかないとき:茶化す反応が出たら「今日は誰かを笑う時間じゃないよ」と短く止める
🔖発問に迷った日は
導入の一言が浮かばない日は、正直ある。僕もある。
→ トワせんせいの発問メーカー
無料の教材も一覧にしてある。
「導入5分テンプレート」20選は、薬物乱用防止教室の前の1時間にも使える。
→ ダウンロード無料の教材
同じ中学2年では、喫煙と飲酒の単元も「知ってるのにやめられない」を扱う点で地続きになっている。
→ 飲酒と健康の指導案|中学2年保健の発問例と板書の組み立て
中学2年のほかの単元はこちら。
→ 中学2年 保健の指導案・教材一覧


