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机間巡視のコツ、ノートより先に見るのは表情

保健の授業中、机間巡視(机間指導と呼ぶ学校もある)で、いったい何を見ているだろうか。

ノートの文字がちゃんと埋まっているか、板書をちゃんと写せているか。恥ずかしながら、僕も長いあいだそこばかり見ていた。埋まっていれば安心して次の班へ、白紙が目立てば「早く書いて」と声をかける。単純と言えば単純だけど、正直それしかしていなかったんじゃないかと思う。

ノートは「静止画」でしかなかった

以前の僕は、保健の板書にかなり時間をかけていた。図やグラフも多いし、大事な言葉は色を変えて書きたい。そうやって板書に力を入れているうちに、気づけば生徒はひたすら黒板を写すだけの時間が長くなっていた。ノートの中身さえきれいに揃っていれば、授業としては成立していると思い込んでいたんだと思う。

でも、ノートって結局「今この瞬間、頭の中で何を考えているか」までは教えてくれない。びっしり埋まっているノートの中身が、実は数分前の板書をそのまま写しただけ、ということも普通にある。ノートは言ってしまえば「静止画」で、教室の中で本当に動いているのは、生徒の表情の方なんじゃないかと思うようになった。

表情には、ちゃんとサインが出ている

そこで、机間巡視のときに見るポイントを、ノートの中身から生徒の表情に変えてみることにした。やってみると、思っていた以上にいろんなサインが出ていることに気づく。

  • 眉間にしわが寄っている生徒 → 発問の意味そのものが分かっていない
  • 手が止まって視線が宙をさまよっている生徒 → 何を書けばいいか分からず固まっている
  • ペン先だけは動いているのに目が全然動いていない生徒 → 作業として惰性で書いているだけ

こういう表情のサインは、ノートの文字を確認するよりずっと早く、しかもリアルタイムで見つけられる。困った顔をしている生徒に「今の発問、どこで引っかかった?」と一言声をかけるだけで、授業の流れを大きく止めることなく、その場で軌道修正できるようになった。

「わかったふり」を早めに見つけたい

正直に言うと、生徒の「わかったふり」を見抜けなかったことが何度もある。ノートには一応それらしいことが書いてあるのに、いざ小テストになるとまるで理解できていない。そういうすれ違いをなくしたくて表情を見るようになったんじゃけど、これが思った以上に効果があった。

例えば「健康の成り立ち」のように、主体・環境・生活という3つの側面から健康を捉え直す単元は、言葉自体は知っていても、頭の中で結びついていない生徒がすごく多い。板書を写している最中の表情を見ていると、「あ、今つながってないな」という瞬間が、ノートに何も書かれていないうちから見えてくる。

気になる表情の生徒を見つけたら、その生徒だけを個別に指名するんじゃなくて、あえてクラス全体に「今の発問、迷った人いる?」と聞き返すようにしている。1人だけがつまずいているわけじゃないことが多くて、結果的にクラス全体の理解を底上げできることも多い。

ある生徒の「困った顔」で気づいたこと

実際にあった話をひとつ。ある生徒がずっと眉間にしわを寄せたまま、ペンを持った手を止めていた。ノートだけ見ていたら「サボってる」と勘違いしていたと思う。声をかけてみると、「健康って、病気じゃないってことだけじゃないの?」と聞いてきた。

その一言で、こちらの説明がまだ「身体的・精神的・社会的に良好な状態」という言葉の表面をなぞっただけで、生徒の頭の中では全然かみ砕けていなかったことに気づかされた。表情を見ていなかったら、その生徒はきっと「わかったふり」のままノートを埋めて、テストで初めてつまずいていたと思う。

正直、こんなふうに授業の途中で自分の説明不足に気づかされるのは、ちょっと恥ずかしい。でも、その場で軌道修正できた方が、テストで点数を落として落ち込ませるよりずっといい。困った顔をしてくれる生徒は、実はクラス全体を助けてくれているんだと、最近はそう思うようにしている。

机間巡視のコツは、見る順番を変えるだけ

  • ノートを見る前に、まず生徒の眉と目を見る
  • 困った顔を見つけたら、書かせてしまう前に一言声をかける
  • 気になる表情が複数人いたら、個別対応ではなく全体に問いを投げ返す

慣れないうちは、どうしてもノートを見る癖が抜けなくて、正直しんどい。板書を写しているかどうかの方が、パッと見て判断しやすいからだ。でも1週間くらい意識して続けてみると、驚くほど自然に生徒の顔を見られるようになってくる。

まぁ、それでも時々「あ、今日は完全にノートしか見てなかったな」という日もある。人間だから仕方ないよなと開き直りつつ、次の授業でまた意識し直す。その繰り返しでいいと思っている。

健康の成り立ちの授業と相性がいい理由

「健康の成り立ち」のように、生徒にとって初めて触れる抽象的な単元ほど、理解できているかどうかが表情にそのまま出やすい。抽象的な概念ほど、生徒は分かったふりでやり過ごそうとする傾向があるからだ。この単元を扱う週は特に、机間巡視の視点をノートから表情に変えてみると、いろんな発見があると思う。

「健康の成り立ち」の授業そのものは、スライド教材と板書ノートのセットにまとめてある。板書をスライドに預けたぶん、生徒の顔を見る時間が増えるので、今日の話とは相性がいい。今は無料で配っている。

ノートを見る時間を、生徒の顔を見る時間に少しだけ置き換えてみる。それだけのことで、机間巡視が単なる「進捗チェック」から、「授業をその場で微調整するための時間」に変わっていく気がしている。次の授業、ノートより先に、生徒の表情を見るところから始めてみてほしい。

明日からいきなり全部の生徒の表情を追いかけようとしなくていい。まずは1班だけ、あるいは気になっている生徒1人だけでいい。小さく始めて、少しずつ視点を広げていけば十分だと思う。焦らなくて大丈夫、僕もまだ全員の表情を完璧に拾えているわけじゃない。


試してみましたか?

「自分には無理」という顔が出やすいのが、応急手当の単元。
その場の2手目を書きました。

応急手当の意義と基本の指導案|中学2年保健の授業展開

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