保健のノート、板書を写すだけの作業になっていないだろうか。
赤ペンを1本増やしただけで、その景色が変わった。
板書を写すだけのノート、発問への答えだけを書かせるノート、いろんなやり方があると思う。今回は、ノートの使い方を少し変えるだけで、生徒の振り返りの質が上がった工夫を紹介したい。特別な道具はいらず、今日からすぐに試せる内容だ。
ノートが「作業」になっていた
以前の僕は、ノートを「授業内容を記録する場所」としてしか使っていなかった。板書を写させて、発問への答えを書かせて、それで終わり。生徒にとっては、ノートを取ること自体が単なる作業になっていたと思う。
これは、僕自身が忙しさの中で「とりあえず書かせておけば安心」という考えに逃げていた結果でもあったと、今なら思う。ノートを取らせることが目的化してしまって、何のために書かせているのかを、正直あまり深く考えていなかった。
ある年、生徒のノートを集めて読み返してみたところ、板書はきれいに写せているのに、自分の考えがほとんど書かれていないノートが多いことに気づいた。写す作業に集中するあまり、考える余白がなくなっていたんだと思う。
改めて考えてみると、板書を写す時間と、自分の考えを書く時間は、生徒の頭の中ではまったく別の作業だ。にもかかわらず、同じノート、同じペンで、区別なく書かせていたことに、恥ずかしながら長い間気づいていなかった。
ノートを「2色」で分けるという工夫
そこで取り入れたのが、「先生が伝えたこと」と「自分が考えたこと」を色で分けて書くというルールだ。板書の内容は黒か青のペンで、自分の考えや気づきは赤ペンで書くようにしてもらう。
この工夫を思いついたのは、実は他教科の先生のノート指導を見学させてもらったのがきっかけだった。教科を問わず使える方法なんだと分かって、保健の授業にもそのまま取り入れてみることにした。
このルールを伝えるだけで、生徒はノートを開くたびに「ここは自分の考えを書く場所だ」と意識するようになる。実際、赤で書かれた部分の量を見るだけで、その生徒がどれだけ授業に主体的に参加できていたかが、パッと見て分かるようになった。
色を分けるという発想自体は、目新しいものじゃないかもしれない。でも「事実」と「自分の考え」を意識的に切り分けて書く経験は、保健に限らずどんな場面でも役立つ力だと思う。情報をそのまま受け取るだけでなく、それに対して自分がどう感じ、どう考えたかを言葉にする。そういう習慣を、ノートというごく身近な道具を通して育てられたらと思っている。
具体的な使い方
- 板書やスライドの内容:黒(または青)で書く
- 発問への自分の考え、班で聞いた意見、疑問に思ったこと:赤で書く
- 授業の最後に、赤で書いた部分だけを振り返る時間を1分取る
この「最後の1分」が地味に効いている。赤い部分だけを読み返すことで、その日の授業で自分が何を考えたのかを、生徒自身が確認できる。
赤で書く内容に迷う生徒には、「今日一番『あ、そうか』と思ったことは?」という一言を投げかけると、書きやすくなる。難しく考えず、感じたことをそのまま言葉にすればいいと伝えるだけで、鉛筆が動き出す生徒が多い。
この振り返りの1分は、先生にとっても使い方次第で授業改善のヒントになる。生徒が赤で何を書いているかを机間巡視でざっと見るだけで、「今日の発問、どのくらい響いたか」を肌感覚で掴めるようになる。
導入した最初の週の変化
ルールを伝えた最初の週は、赤ペンを使い慣れていない生徒も多く、色分けがあいまいなノートもあった。それでも2週目、3週目と続けるうちに、自然と使い分けができるようになっていった。
ある生徒のノートには、「今日の発問、最初は分からなかったけど、班で話してるうちに分かってきた」という赤字のメモが残っていた。板書だけでは絶対に残らない、生徒自身の思考の跡だと感じた。
こうした赤字のメモは、学期の終わりにまとめて読み返すと、その生徒がどんなことに関心を持ち、どんな風に考えを変化させてきたかが見えてくる。1回1回のノートだけでは気づきにくいことも、積み重ねてみると見えてくるものがある。
運用のコツ
- 最初の授業で、色分けのルールを丁寧に説明する(慣れるまで数回声かけが必要)
- 赤ペンを忘れた生徒には、無理に貸し借りさせず、鉛筆で「自分の考え」だと分かる印(星マークなど)をつけさせてもいい
- ノートを回収するときは、赤い部分を中心に目を通すと、短時間でも生徒の理解度が把握しやすい
慣れてきたクラスでは、赤で書く内容をさらに「疑問」「気づき」「感想」のように分けさせることもできる。ただし、最初からルールを複雑にしすぎると続かなくなるので、まずは「事実は黒、自分の考えは赤」というシンプルな型から始めることをおすすめする。
評価にも使える
このノートは、テストの点数だけでは見えない生徒の思考過程を知る手がかりにもなる。赤で書かれた内容を、平常点や授業態度の評価材料の一つとして参考にすることもできる。
ただし、赤い部分の「量」だけで評価しないように気をつけている。たくさん書けているからといって、必ずしも深く考えられているとは限らない。短くても本質を突いた一言が書けている生徒もいるので、量より質を見る意識は忘れないようにしたい。
最後に
板書と自分の考えを色で分けるだけの、小さなルールだ。それでも、ノートが「写す場所」から「考える場所」に変わっていく様子を、これまで何度も見てきた。次の授業から、ぜひ試してみてほしい。
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ノートは、生徒にとって一年間ずっと手元に残るものだ。その中に、先生の言葉だけでなく、生徒自身の言葉も残っていく。そんなノートを、これからも大事にしていきたい。今日紹介した色分けを、来週の授業からぜひ試してみてほしい。
試してみましたか?
ノートの1文で到達を見るやり方は、単元ごとに書いてあります。
飲酒の授業はこちら。

